2020年に制作し、発表の機会を得ることが出来た事は
ここ数年の展示の中でも、とても意味のある事となりました。
世の中が、世界が毎日加速して動いてき、常識や価値観が変わっていく中、
一表現者として
今この時の影響が、どのように作品に表れてくるのか、
「変わる」のか、「変わらない」のか、「変える」のか、「変えない」のか
そして、なぜ「描く」のか。
制作する上で、常に意識している事とはいえ、
さらに絵画に向かう根本を考え思考を巡らせる機会となりました。
感染症の事以外にも、今年は多くの別れや再会があり
悲しみと喜びとで、大きく感情を揺さぶられた事も
制作の軸が狂わないよう、考え直すきっかけとなりました。
そんな日々を送る中、目に見えない不安をまとっているとはいえ
ふと外に目を向けると
目に見える自然は、季節は、世の中の人間の動きは物ともせずに
美しく確実に生きていました。
新たなる価値観に覆い尽くされる前に
変わらぬ価値観を、普遍的な自然の営みを、
目に見える色彩のひとしずくにでも表す事ができればと
今まで以上に感じました。
戻らぬ過去の記憶の残響が、今なお胸に響き、
気持ちが揺らぐ事も受け入れながら
より普遍的な価値の大事さに気付く契機となった年に
制作した作品は、思いの外変わらず静かに
自分を見つめてくれました。
少しでも自然の普遍性を想起していただければ
何よりと願っております。
1969
茨城県生まれ
1992
武蔵野美術大学造形学部油絵学科卒業
卒業制作優秀賞
1994
武蔵野美術大学大学院 造形研究科美術専攻油絵コース修了
2010
第24回ホルベインスカラシップ認定